読書
永井均さん自身にとっては、『〈子ども〉のための哲学』という本は、もう古すぎて、あんまり読んで欲しくなさそうなのだが、私が人に、「永井均」的なるものを説明しようと思うと、やはり挙げたいのは、この本なのだ。 この本以上に、問題点がクリアに明示さ…
2005年8月、三島由紀夫主演「憂国」のネガフィルムが発見された。 それまでこの作品は、三島の死後、三島夫人によって、上映停止、及びネガフィルム全焼却が命じられ、フィルムは現存しないものと信じられてきた。ところが、三島夫人の死後、三島邸を整理す…
或る「小倉日記」伝 (新潮文庫―傑作短編集) 松本 清張(著) 本書は、ミステリー作家として名を馳せる以前の、松本清張の純文学的作品を集めた短篇集である。しかし、単なる流行作家の前史的作品集という言葉だけでは括りきれない、重い内容をもった本である…
カントの『純粋理性批判』を通読したのはコロナ前の2019年頃だった。読み通すのにだいたい一年ぐらいかかった記憶がある。 若い頃にはカントには興味がわかなかった。 というより、ポストモダン的なものによって乗り越えられた古色蒼然たる近代思想の権化、…
(承前)高村友也『存在消滅』 死の問題について集中的に語る人に哲学者の中島義道氏がいる。私は一時期、彼の本もかなり読んでいた。 死の問題というのは上手く言い表すのが難しく、「そりゃ誰だって死ぬのは怖いさ」といったありふれた感想を引き出すのが関…
(承前)死の恐怖を解決する方法 最近、哲学者の永井均さんから引用ツイートしてもらうということがあった。 https://twitter.com/hitoshinagai1/status/1723686926098788786 私のツイートのインプレッションは、ふだんはせいぜい百あるかないかといったところ…
下に挙げるベスト10は、コロナ前の2019年年末、その年に読んだ本の中から印象に残ったものを10冊選んでFacebookに投稿したもの。 なんでこんなものを今頃ここにアップする気になったかというと、ひさしぶりにこのリスト見て、まるで自分とは違う他人のものを…
『ドン・キホーテ』を読んでいる。 といっても岩波文庫全六巻のうち一冊目を読み終わっただけだが…。 ラノベを大量に読みすぎて完全にバーチャル脳に侵されてしまったオタクが「オレはスーパーヒーローだ~」とか言って各地でムチャクチャする話。 風車を巨…
(承前)「90年代の宴会」 2019年1月、橋本治が亡くなった。 生きていたら、今のコロナ禍のことを、なんて言っていただろう。 私は若い頃、橋本治の、かなりヘヴィな愛読者だった。ことに『親子の世紀末人生相談』なんて、かなり熟読していた。今でも、「人生…