マルコによる新明解独語辞典

WEB連載「マンガのスコア」とマンガ「ゴミクズマン」の作者のブログです。

「あの世」なんてない

遊刊エディストのリレーコラムでは、毎回、その月のテーマというのが決まっていて、今月のテーマは「彼岸」だった。 私は「あの世なんて(たぶん)ない」と思っているので、そのことを率直に書いた。 しかし、さすがにお題に、まっこうからケンカを売ってい…

遅咲きでしかありえなかった人 松本清張『ある「小倉日記」伝』

或る「小倉日記」伝 (新潮文庫―傑作短編集) 松本 清張(著) 本書は、ミステリー作家として名を馳せる以前の、松本清張の純文学的作品を集めた短篇集である。しかし、単なる流行作家の前史的作品集という言葉だけでは括りきれない、重い内容をもった本である…

ゴミクズマン 第5話・究極のデスゲームの巻

第4話はコチラ

『純粋理性批判』はどの翻訳で読む?

カントの『純粋理性批判』を通読したのはコロナ前の2019年頃だった。読み通すのにだいたい一年ぐらいかかった記憶がある。 若い頃にはカントには興味がわかなかった。 というより、ポストモダン的なものによって乗り越えられた古色蒼然たる近代思想の権化、…

コルクラボマンガ専科のニセ学生

※冒頭の二コマはTwitterに投稿したマンガのことです。 コルクラボマンガ専科第8期も、もうそろそろ終わったのだろうか。(部外者なのでよく知らない) ここ数か月「#コルクラボマンガ専科」のハッシュタグを勝手に使わせてもらい、投稿を続けていた。意外にい…

北野武の新作を観に行った

北野武の新作「首」を、さっそく観に行った。 封切り初日の朝一番の回。客の入りは八割くらい。週明けの集計報道を見てみないとわからないが、大ヒットというほどでもないのか? 私自身どうかというと、いの一番に駆けつけるくらいだから、まあ楽しみにはし…

こども戦隊ヘモグロビン5

中島義道と高村友也

(承前)高村友也『存在消滅』 死の問題について集中的に語る人に哲学者の中島義道氏がいる。私は一時期、彼の本もかなり読んでいた。 死の問題というのは上手く言い表すのが難しく、「そりゃ誰だって死ぬのは怖いさ」といったありふれた感想を引き出すのが関…

高村友也『存在消滅』

(承前)死の恐怖を解決する方法 最近、哲学者の永井均さんから引用ツイートしてもらうということがあった。 https://twitter.com/hitoshinagai1/status/1723686926098788786 私のツイートのインプレッションは、ふだんはせいぜい百あるかないかといったところ…

死の恐怖を解決する方法

(承前)死の恐怖について 死の恐怖を打ち消すルートが一つ考えられる。 独我論の時間バージョン、”独今論”だ。世界は、「今・ここ」しかないわけで、現に今死んでいない上、死は存在しない。 これはただの観念的な屁理屈のようにも聞こえるが、同時にきわめて…

死の恐怖について

幼少期に、ある日突然、「自分が死ぬ」という事実が、恐るべきリアリティとともに襲いかかり、激しい恐怖とともに泣きわめく、という経験をしている者が多いと聞く。しばしば耳にする話なので、世の中の全員ではないにしろ、それなりの割合で経験者がいるよ…

カラスくん

ゴミクズマン 第4話・伊達ルリ子の巻

第3話はコチラ

村上春樹にノーベル賞をそろそろあげてよ。

そういえば、そろそろノーベル文学賞の季節なのでは?と思い、なんとなくネットをチェックしてみたところ、ブックメーカーのオッズは今年も村上春樹がトップ人気ということらしい。 ずいぶん以前から最有力視されつつ選に洩れ続けていたので、そろそろ見放さ…

一人娘とハイキング

三十郎

大決闘

マンガ【コンビニ人間失格】とその附論・総目次

わかりやすく目次を作ってみました。 この一連のツイートの出自と由来については一投目の「マンガ「コンビニ人間失格」」のあとがきに書いてある通りです。 附論の方は、ゆるやかに話がつながっているので、できれば頭から順番に読んでいただく方がいいので…

90年代の宴会

(承前)「社会に出る」 私の最初の就職先は四ヶ月で終わった。 その四か月のことは、あまりに悪夢過ぎて、ほとんど記憶の中から消失している。しかし、なぜだか一つだけよく覚えていることがある。 就職して一、二ヶ月目ぐらいのことだったろうか。 地域の支…

社会に出る

(承前)就職活動 お粗末極まりない就職活動の末ではあったが、なんとか内定を獲得することができた。私は「引きこもり」(当時、その言葉はまだなかったが…)になることもなく、四月から社会人としてスタートすることになったのである。 当然、私は、怯えに怯…

就職活動

(承前)「おひとりさま」 アルバイトすら怖くてなかなかできなかった私に、就職活動などできるわけがなかった。 周りの人たちがリクルートスーツを着て各社を駆けずり回っている頃、自分は資料請求のハガキすら一枚も出していなかった。 大学四年の春も終わる…

おひとりさま

(承前)「命名というマジック」 かつての自分は、世界に類例のない固有の問題を抱えていた。全くどう表現していいのか分からず、もどかしかった。しかし、それは文学や哲学が取り上げるような高級な悩みに比べると、なんとも「絵にならない」もので、幼稚なも…

命名というマジック

(承前)「全力で空気を読む」 ◎命名というマジック 十年ほど前に「マウンティング」なる言葉を初めて目にしたとき、「言い得て妙!」と思った。 私は、この現象を学生時代からしばしば目にしていた。 俺はコレを知ってるとか、これを読んだとか言い、いや、そ…

全力で空気を読む

(承前)「わからなかったこと その2」 『コンビニ人間』を読んで、主人公の古倉さんに親近感を覚えた。 世界の仕組みがどうなっているのか、さっぱり理解できず、意味もわかず手探りで行動している。その感じが自分に似ていると思った。 自分が「わからない…

わからなかったこと その2

(承前)「わからなかったこと」 もう一つ、わからないままになっていることがある。 「友人たちとお茶をする」などという経験はほとんどしたことがない私だが、一度だけ大学のゼミ生で集まってお茶をしたことがあった。 ある帰国子女の人が、英語をマスターす…

わからなかったこと

(承前)「アサーショントレーニング」 ある時、いつものように飲み会で一言もしゃべれず、悄然と帰りかけていた時、ある人から声をかけられた。 「缶ジュース奢るからちょっとつき合え」と言う。 私は言われるままに、彼と一緒に缶ジュースを飲みながら夜の公…

アサーショントレーニング

(承前)「アライくん」 近著『星新一の思想』などで知られる浅羽通明氏は、90年代、頭でっかちのインテリおたくを舌鋒鋭く批判するスタイルで知られていた。 観念を弄んで、いい気になることを戒め、リアルと向き合い、等身大の自分を直視することが説かれて…

アライくん

(承前)「よくわかるよ」 私はなぜ、こんなにしゃべれないのか。 人としゃべれなくなったのは、中学2年の春に関西に転校して以来のことなのだが、それ以前からその兆候はあった。 小学校も高学年から中学となると、男子は皆、自分のことを「俺」と呼び、他人…

「よくわかるよ」

(承前)「フリーズする私」 人見知りが激しく、いつもむっつりしている。 こういうヤツを見ていると我慢できない人が多いらしく、私は、いろんな人からよく説教された。どれだけ多くの人から懇々と説教されたことか。かなり高圧的にやられることもあったが、…

飲み会が苦手だった私

(承前)「アルバイトができなかった私」 大学時代の私にとって、アルバイトと同じぐらい重要な課題だったのが「飲み会」だった。 飲み会は、自分にとって、何の楽しみでもなく、まさに「修行」のためのものだった。人見知りが激しく、内にこもりがちな私は、…