マルコによる新明解独語辞典

WEB連載「マンガのスコア」とマンガ「ゴミクズマン」の作者のブログです。

雑記

「あの世」なんてない

遊刊エディストのリレーコラムでは、毎回、その月のテーマというのが決まっていて、今月のテーマは「彼岸」だった。 私は「あの世なんて(たぶん)ない」と思っているので、そのことを率直に書いた。 しかし、さすがにお題に、まっこうからケンカを売ってい…

中島義道と高村友也

(承前)高村友也『存在消滅』 死の問題について集中的に語る人に哲学者の中島義道氏がいる。私は一時期、彼の本もかなり読んでいた。 死の問題というのは上手く言い表すのが難しく、「そりゃ誰だって死ぬのは怖いさ」といったありふれた感想を引き出すのが関…

高村友也『存在消滅』

(承前)死の恐怖を解決する方法 最近、哲学者の永井均さんから引用ツイートしてもらうということがあった。 https://twitter.com/hitoshinagai1/status/1723686926098788786 私のツイートのインプレッションは、ふだんはせいぜい百あるかないかといったところ…

死の恐怖を解決する方法

(承前)死の恐怖について 死の恐怖を打ち消すルートが一つ考えられる。 独我論の時間バージョン、”独今論”だ。世界は、「今・ここ」しかないわけで、現に今死んでいない上、死は存在しない。 これはただの観念的な屁理屈のようにも聞こえるが、同時にきわめて…

死の恐怖について

幼少期に、ある日突然、「自分が死ぬ」という事実が、恐るべきリアリティとともに襲いかかり、激しい恐怖とともに泣きわめく、という経験をしている者が多いと聞く。しばしば耳にする話なので、世の中の全員ではないにしろ、それなりの割合で経験者がいるよ…

村上春樹にノーベル賞をそろそろあげてよ。

そういえば、そろそろノーベル文学賞の季節なのでは?と思い、なんとなくネットをチェックしてみたところ、ブックメーカーのオッズは今年も村上春樹がトップ人気ということらしい。 ずいぶん以前から最有力視されつつ選に洩れ続けていたので、そろそろ見放さ…

90年代の宴会

(承前)「社会に出る」 私の最初の就職先は四ヶ月で終わった。 その四か月のことは、あまりに悪夢過ぎて、ほとんど記憶の中から消失している。しかし、なぜだか一つだけよく覚えていることがある。 就職して一、二ヶ月目ぐらいのことだったろうか。 地域の支…

社会に出る

(承前)就職活動 お粗末極まりない就職活動の末ではあったが、なんとか内定を獲得することができた。私は「引きこもり」(当時、その言葉はまだなかったが…)になることもなく、四月から社会人としてスタートすることになったのである。 当然、私は、怯えに怯…

就職活動

(承前)「おひとりさま」 アルバイトすら怖くてなかなかできなかった私に、就職活動などできるわけがなかった。 周りの人たちがリクルートスーツを着て各社を駆けずり回っている頃、自分は資料請求のハガキすら一枚も出していなかった。 大学四年の春も終わる…

おひとりさま

(承前)「命名というマジック」 かつての自分は、世界に類例のない固有の問題を抱えていた。全くどう表現していいのか分からず、もどかしかった。しかし、それは文学や哲学が取り上げるような高級な悩みに比べると、なんとも「絵にならない」もので、幼稚なも…

命名というマジック

(承前)「全力で空気を読む」 ◎命名というマジック 十年ほど前に「マウンティング」なる言葉を初めて目にしたとき、「言い得て妙!」と思った。 私は、この現象を学生時代からしばしば目にしていた。 俺はコレを知ってるとか、これを読んだとか言い、いや、そ…

全力で空気を読む

(承前)「わからなかったこと その2」 『コンビニ人間』を読んで、主人公の古倉さんに親近感を覚えた。 世界の仕組みがどうなっているのか、さっぱり理解できず、意味もわかず手探りで行動している。その感じが自分に似ていると思った。 自分が「わからない…

わからなかったこと その2

(承前)「わからなかったこと」 もう一つ、わからないままになっていることがある。 「友人たちとお茶をする」などという経験はほとんどしたことがない私だが、一度だけ大学のゼミ生で集まってお茶をしたことがあった。 ある帰国子女の人が、英語をマスターす…

わからなかったこと

(承前)「アサーショントレーニング」 ある時、いつものように飲み会で一言もしゃべれず、悄然と帰りかけていた時、ある人から声をかけられた。 「缶ジュース奢るからちょっとつき合え」と言う。 私は言われるままに、彼と一緒に缶ジュースを飲みながら夜の公…

アサーショントレーニング

(承前)「アライくん」 近著『星新一の思想』などで知られる浅羽通明氏は、90年代、頭でっかちのインテリおたくを舌鋒鋭く批判するスタイルで知られていた。 観念を弄んで、いい気になることを戒め、リアルと向き合い、等身大の自分を直視することが説かれて…

アライくん

(承前)「よくわかるよ」 私はなぜ、こんなにしゃべれないのか。 人としゃべれなくなったのは、中学2年の春に関西に転校して以来のことなのだが、それ以前からその兆候はあった。 小学校も高学年から中学となると、男子は皆、自分のことを「俺」と呼び、他人…

「よくわかるよ」

(承前)「フリーズする私」 人見知りが激しく、いつもむっつりしている。 こういうヤツを見ていると我慢できない人が多いらしく、私は、いろんな人からよく説教された。どれだけ多くの人から懇々と説教されたことか。かなり高圧的にやられることもあったが、…

飲み会が苦手だった私

(承前)「アルバイトができなかった私」 大学時代の私にとって、アルバイトと同じぐらい重要な課題だったのが「飲み会」だった。 飲み会は、自分にとって、何の楽しみでもなく、まさに「修行」のためのものだった。人見知りが激しく、内にこもりがちな私は、…

(「コンビニ人間失格」附論)アルバイトができなかった私

(マンガ「コンビニ人間失格」からつづく。) コンビニのアルバイトはやったことはないが、もしやっていたらどうなっていたのだろうと想像する。二十歳前後の自分は(今もだが)極度の人見知りだったので、ちょっと無理だったのではないかと思う。 対面の接…

かつて私は活字中毒者だった

下に挙げるベスト10は、コロナ前の2019年年末、その年に読んだ本の中から印象に残ったものを10冊選んでFacebookに投稿したもの。 なんでこんなものを今頃、ここに転載する気になったかというと、ひさしぶりにこのリスト見て、まるで自分とは違う他人のものを…

スノビズムは死に絶えた。

最近、我が家にベースギターが! 一人娘が友達に誘われて大学の軽音楽部に入ったらしい。 軽音ってどんな感じなの?と聞いてみたら、 「お父さんがよく口にするオアシスやU2やレッド・ツェッペリンという名前を出しても知ってる人は、あんまりいない」とのこ…

東北の人たち

2011年5月、被災地の調査のために、東北地方に、ほんの短い期間、滞在したことがあった。 実働七日間(前後は長距離バスによる車中泊で都合九日)という短い期間であったが、被災地のほんのごく一部をかいま見る貴重な経験ではあった。 とはいえ、ニュース映…

「マルコ」について

ブログに「マルコによる新明解独語辞典」というタイトルをつけた。 「新明解~」というのは、ご存じの通り独創的な編集で知られる国語辞典にちなんだものだが、頭についている「マルコ」というのは、私のクリスチャンネームだ。 といっても「幼児洗礼」とい…

ヨコ問題

哲学には大きく分けてタテ問題とヨコ問題というのがある、というのが永井均氏の説である。 …というように二種類に分けて言うと、あたかもこの両者が拮抗しているような印象を覚えるが、実は哲学史上、ほぼ全員がタテ問題を論じており、ヨコ問題に自覚的なの…

ブログはブログで悲惨な状況…

はてなブログを開設してしばらく経つが、いやあ、こんなものだったのか。 この年になるまで、ブログだのSNSだのには全く手を出してこなかったが、たぶん書けばそれなりに読まれるものなんだろうと思っていた。無名の人の書いたブログでも100やそこらのアクセ…

Twitterはあいかわらず…。

目標はフォロワー数100人だー!(大きく出たな…)他人のフォロワー数が100人ぐらいだと「この人えらい少ないな」と思うんだけど、よく考えると自分の方がよっぽど少ない。自分が100人超えるようなことがあったら「スゴイな自分。100人も!」と自画自賛するに違…

承認をめぐるゲーム

この世でホリエなにがしという個体に受肉してしまった以上、もうこれでやっていくしかないのだが、そんな大したスペックもないのに、人生の勝ち負けを決めるゲームに参加するのは、なかなかしんどいものがある。 そんなゲームに積極的に参加する必要など、そ…

名前が思い出せない人

私は記憶力全般が弱くて、エピソード記憶のようなものもダメなのだが、とりわけダメなのが、人名・地名・数字の類いだ。 そのため暗記科目と言われる社会科などは、いつもヒドい成績だった。 歴史などは、どちらかというと大好きな部類で、高校時代に選択し…

ゲーム嫌いな私

多くの愛好者がいるのに、自分は何が面白いのかさっぱりわからない、という場合、その面白さというのはなんなのか、というのは、いつも気になる。 結局、「他人のことが、わからない」ということが、いつも自分の核になっているような気がする。 中学二年で…

フリーズする私

(承前)「飲み会が苦手だった私」 パソコンがフリーズするという話はよく聞くが、人間も、ときにはフリーズするのである。私のような口下手な人間は、よくフリーズする。たとえば、突然、話しかけられたりすると、とっさに声が出なかったりする。 そういえば…