マルコによる新明解独語辞典

WEB連載「マンガのスコア」とマンガ「ゴミクズマン」の作者のブログです。

わからなかったこと

(承前)「アサーショントレーニング」

 

ある時、いつものように飲み会で一言もしゃべれず、悄然と帰りかけていた時、ある人から声をかけられた。

「缶ジュース奢るからちょっとつき合え」と言う。

私は言われるままに、彼と一緒に缶ジュースを飲みながら夜の公園のベンチで話をした。

私が周りに対して心を開かないことが話題にされ、その時、思い余った私は普段から感じている苦衷を吐露した。

ひととおり話を聞き終わった彼は言った。

「今の話を聞いて思ったのは、お前は一つ、とても重要なことに気がついていない」

それは何ですかと尋ねても彼は答えなかった。

「それは俺の口から言っても意味はない。自分で気がつく以外にない」

自分はしばらく考えた

「たとえば…自分のことばっかり言って、他人のことを考えていない…とか」

「いや、そうじゃない」

「…被害妄想とか、ネガティブなことばかり言うところ…」

「全然違う」

私は思いつく限りことを言ったが、そのことごとくを彼は否定した。

答え疲れた私は言った。

「…じゃあ、これは自分への宿題として、これからじっくり考えることにします…」

彼はニヤニヤしながら、

「まあ、一生わかんないだろうね」

と言った。

そして、じゃあな、と言い捨てて去って行った。

彼が考えていた「答え」とは、いったいなんだったのだろう。

いまだにわからない。

 

「わからなかったこと その2」につづく。