(承前)「アサーショントレーニング」
ある時、いつものように飲み会で一言もしゃべれず、悄然と帰りかけていた時、ある人から声をかけられた。
「缶ジュース奢るからちょっとつき合え」と言う。
私は言われるままに、彼と一緒に缶ジュースを飲みながら夜の公園のベンチで話をした。
私が周りに対して心を開かないことが話題にされ、その時、思い余った私は普段から感じている苦衷を吐露した。
ひととおり話を聞き終わった彼は言った。
「今の話を聞いて思ったのは、お前は一つ、とても重要なことに気がついていない」
それは何ですかと尋ねても彼は答えなかった。
「それは俺の口から言っても意味はない。自分で気がつく以外にない」
自分はしばらく考えた
「たとえば…自分のことばっかり言って、他人のことを考えていない…とか」
「いや、そうじゃない」
「…被害妄想とか、ネガティブなことばかり言うところ…」
「全然違う」
私は思いつく限りことを言ったが、そのことごとくを彼は否定した。
答え疲れた私は言った。
「…じゃあ、これは自分への宿題として、これからじっくり考えることにします…」
彼はニヤニヤしながら、
「まあ、一生わかんないだろうね」
と言った。
そして、じゃあな、と言い捨てて去って行った。
彼が考えていた「答え」とは、いったいなんだったのだろう。
いまだにわからない。
「わからなかったこと その2」につづく。